授業参観

ムスメたちに実施のお知らせを渡されたとき、

「来ないでしょ?ってか来なくていい」

と揃って言われたこともあって、まったく行くつもりはなかった。

しかし、仕事仕事仕事仕事仕事の日々に心身ともに疲れているので堂々と、罪悪感なく、休む方法としていいかもしれないと思った。

「やっぱり明日行くよ」

登校前の次女に伝えたところ、驚いたような困ったような、なんともいえない表情だった。

「あ、いやだったら言って」

「ん……大丈夫……来なくて」

「…………そう?わかった。行ってらっしゃい」

きっと今度はわたしがなんともいえない表情だったのだろう。

「ママ、来たいの?」

「んー、そうね。行こうかなぁって気分になったんだよねぇ」

「じゃ、来てもいいよ!行ってきます!!」

……なんという可愛さよ。

心臓がきゅんっとしたのは決して、玄関先でドアを開けていたせいだけではないだろう。

 

仕事を終えて帰宅すると、

「明日発表する技、変えたんだ」

と言われたので理由を聞いた。

跳び箱の技3つのうち、これぞ!という1つを決めて披露するとのことで、わたしが来るのであれば無難に成功できるものがいいからと変更したらしい。

……なんという可愛さよ。

いかにも緊張しぃで心配性、慎重派の次女らしい。

「がんばれ」は負担になるし、わざわざ言うまでもなくがんばっているから普段言わないようにしているのだが、あやうく「がんばれ」と言いたくなるほど、健気な姿が心底愛おしくてたまらなかった。

「いいね!」

と返事をしたら満足そうに笑っていた。

今年は運動会や持久走大会などの行事がことごとく中止になった。明らかに普段とはまったく異なる独特な雰囲気のなか『日頃の成果』を披露しなくてはいけないという場面をほとんど経験せずに済み、すっかり油断していたところに今回の参観。

きっといつも以上に心臓ばくばくしているんだろうなと思えて、その笑顔でまたきゅんっとなった。

 

当日の朝。

普段の仕事着は紺色シャツに黒か紺色ズボン。

でも今日は授業参観モードでいこうと薄グレーのカーデにカーキのロングスカートにした。

あぁ、色味のある服を着て出勤するとはこんなにも幸せだったんだな。

それに、いいお天気の日に午後半休。とても気分がいい。

 

「あれ?なんだか今日は雰囲気違うね」

「スカート可愛いね」

 職場に行くとみんな笑顔で言ってくれた。

「午後、ムスメの授業参観に行くんです」

「うわぁ、たのしみだね」

「いいねぇ」

『授業参観』という言葉がこんなにも大人を笑顔にさせるとは思わなかった。

 

次女よ、来てもいいと言ってくれて本当にありがとう。まだ行ってもいないのにとっても幸せだよ。

 

苦手な跳び箱に向かっていく次女は充分がんばっていた。自分だけでなくクラスメイトが無事越えるたびに喜びを分かち合って、たくさん笑っていた。見に行ってよかった。今思い出すだけで涙が出るほど幸せな時間だった。

「みんな、教室へ戻る前に、来てくれてありがとう!っておうちの方にバイバイしてください」

と担任の先生が仰った途端、わたしに向かって両手をぶんぶん振り続けてくれた次女。

「気付かないくらい端っこでこっそり見るから」

と言ってあったのに、終業ベルが鳴る頃には見学エリアのセンターへだいぶ寄っていた。

わたしも感謝のきもちを込めて両手を振った。

来てもいいと言ってくれてありがとう。

家族のなかで1番の年少さんだから、いつまでも赤ちゃんだと思っていたけれど、すっかりお姉さんになっていたんだね。

がんばる姿を見せてくれて、ありがとう。

 

とってもとっても幸せ。